◇二ッ森(秋田・藤里町、青森・鰺ケ沢町=1086メートル)
◎ブナの緑がまばゆい 世界遺産、白神の山
〜♪秋田名物八森ハタハタ、男鹿で男鹿ブリコ。
民謡秋田音頭で歌われる八森町(現八峰町)から、青森県をつなぐ予定だった広域基幹林道青秋線の建設が中止となり、開発から免れた広大なブナの森の白神山地が、屋久島と共にわが国初の世界自然遺産に登録されてはや22年。
「自然保護とは」「自然と人間との付き合い方とは」と考えるきっかけともなった林道の終点は、青森との県境にまで達しており、今となっては遺産の森を眼下に登る「二ツ森」へ車で簡単にアプローチできる全線舗装の道となっている。
では初心者でも簡単に遺産の森を眺めることのできるこの山に登ってみよう。
能代市方面から国道101号を北上し、八森駅を過ぎて「白神山地二ツ森登山口」の大きな標識に従い右折、「ぶなっこランド」に寄って登山届を提出しよう。
青秋林道終点までは車で約40分。
トイレを済ませ、登山口の玄関マットで靴底に付いた里の植物の種を拭き取ってから入山する。
ひと登りすれば八峰町、藤里町、青森県鰺ケ沢町との境界となり、ここから世界遺産地域に足を踏み入れることになる。
厳密に守られている核心地域を取り巻く緩衝地域ではあるが、草木の伐採や枝を折ることなどは禁じられている。
道は豊かなブナ林の中をいったん鞍部(あんぶ)まで下り、一部急な登りを交えながらピークをめざす。
ところどころササが刈り払われている箇所からは眼下にどこまでも続く広大なブナ林と、遅くまで残雪の白さが目立つ白神岳、遠くに秀麗な姿の津軽富士(岩木山=1625メートル)が望まれる。
一汗かいたところで森林限界を抜け出た小広場に着き、振り返れば日本海が光り輝いている。
広場のすぐ隣が頂上で、青森、秋田両県にまたがる遺産の森を見渡し満足度もピークを迎える。
帰路は来た道を戻る。
急なところは枝などにつかまってゆっくりと下りよう。
下山届を出し、時間があれば真瀬川渓流の「三十釜遊歩道」を散策しながら、さまざまな命育む「森の白神」のみならず「水の白神」を感じてみるのもよい。(東北マウンテンガイドネットワーク 後藤千春)
【ガイドの目】
◎秋は明るい黄葉の森
白神山地のシーズン開幕は例年5月下旬。
谷あいに雪が残る山の新緑は日に日に緑が標高を上げる「ブナの峰走り」と呼ばれ、6月下旬の梅雨入りまでは爽やかな山歩きができる。
夏は暑いが、緑濃い森では鳥や虫などこの森が育む命の息吹が聞こえる。紅葉は10月上旬―下旬、ブナが主体の森なので一面黄色く明るい森となる。
葉を落とせば繊細な小枝が陽に光る銀細工の森、そして白い世界となり山は眠りに入る。
下山後は産直品やハタハタ料理を楽しめる温泉施設「ハタハタ館」も楽しみ。
▽参考タイム 青秋林道終点(1時間)二ツ森山頂(50分)青秋林道終点
提供:共同通信社