小屋外観

山小屋利用の登山について〜これまで山小屋で働いてきて、感じたこと〜


聖平小屋は、静岡と長野にまたがる標高3013メートルの聖岳の麓にあります。

小屋外観

小屋の標高は2260メートル、南アルプスの森林限界は2600メートルぐらいですから小屋の周りをシラビソの森に囲まれています。

深田久弥の百名山の一つにもなっているので、個人の方以外にもツアーの方も大勢訪れます。

聖平小屋のアクセスには4通りの方法があります。

静岡方面からは、井川や椹島に泊まって聖沢ルートで来る方法、次に長野の飯田市を経て便ケ島(たよりがしまと読みます)から来る方法、ほとんどの登山者はこのどちらかのルートを使ってきます。

今年2016年は長野県側の道が通行止めで、通れませんのでご注意下さい。

3つめに北方面三伏峠や更には広河原や北沢峠から南下して縦走してくる方法、このルートは以前は重いザックをしょった山岳部の学生さんが多かったのですが最近はトレイルランの影響もあってランナーの方が増えました。

4つ目は、逆に光岳方面から北上してくる方法です。

聖平小屋はこれらの4方向からの道が交わる十字路のような位置にあります。

小屋の収容人数は定員120名で、便利な立地にあるからでしょうか、このエリアの稜線付近にある小屋の中では大きい小屋になります。

小屋が営業しているのは7月の海の日から9月のシルバーウィークまでの70日ぐらいですが、宿泊する方だけでも3500人ほどいらっしゃいます。

テントの方も入れると5000人を超えます。

たくさんの登山者が訪れてくれて、うれしいことなのですが、いくつか気になることもあります。

一つは「小屋には遅くても4時には着いてほしい。早出早着」南アルプスの山域の特徴は小屋の数が少ないことです。

これは縦走だけでなく、アプローチにも言えることで、静岡県側からも、長野県側からも登山口から小屋に着くまで平均7、8時間かかります。

また、夏は午後になると雷が発生する確率が高くなります。

聖平小屋

ですので、縦走の場合、稜線上にいるのは午前中にして午後の早い時間には稜線から降りていて安全な樹林帯や小屋、テント場にいるように余裕を持って行動してもらいたいと思います。

私は小屋にいる時以外はガイドをしています。

ガイドをしているとお客様から「ゆっくり行けば大丈夫。時間をかければ行ける」という言葉を時々耳にします。

その言葉自体間違ってはいませんが、「スピード=安全」という言葉があり、危険な所はなるべくスピーディに通過することはとても大切なことです。

ゆっくりいけば遅くなっても到着するかもしれませんが、暗くなって行動することによる道迷いや転倒などの怪我などリスクは高まります。

南アルプス聖平の夕暮れ

ご自身の体力や体調などをよく考えて無理のない行動をしてほしいと思います。

もし、疲れて計画通りに行動できない場合はあきらめて引き返すか、無理に計画通り小屋までたどりつこうとしないことです。

そういう時にツェルト1枚あれば雨風はしのげます。

私はどんな時でもツェルトは持って行きます。

もう一つ、お願いしたいのは「パーティを組むことの意味を考えて行動してほしい」ことです。

山登りの基本の一つにパーティでは「一番弱い人のペースで歩く」ことがあります。

ですが残念なことに遅い人や調子が悪い人を後にして先に到着されることもあるのです。

ばてた人の中には「遅いから迷惑をかけるので先に行って」と自分から言われる方もいます。

皆に悪いと思う気持ちはわかりますがあなたが逆の立場だったら、一人で置いて行きますか?と聞いてみたい。

万が一何かあった時に先に行ってと言われたからというのは通用しないでしょう。

なぜなら一人で登りに来たわけではないからです。

パーティが分かれることは遭難原因の最も大きなものの一つです。

誰にも束縛されずに自分のペースで山登りがしたければ、単独で行くか公募のツアーに入らずに個人でガイドを雇って行くべきです。

どのような形態であれパーティを組む以上は仲間意識を持って行動していただきたいと思います。

著者:掛川義孝

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