奥多摩・水根沢〜沢登り紀行(5)〜


日本は世界有数の真水と山と森の多い国です。

必然のように、沢登りという日本独自の登山形態が生まれました。

沢登りと言っても、なるべく濡れないようにして体力を温存しながら登るのがセオリーです。

でも、水根沢は胸まで水に浸かって滝や水流を超え進みます。

なので、気温だけでなく水温も高い残暑の時期に行くのがお勧めです。

その頃でも寒いくらいかも知れません。

石尾根まで登らずに終了すれば1時間かからずに水根バス停に下山出来ます。

水根にはトイレのある公共無料駐車場があって着替えも容易です。

 

【アプローチ】

奥多摩駅から西東京バス丹波か鴨沢西行に乗車、20分で水根バス停です。

平日でも1時間に1本はバスの便があります。

マイカーの場合は水根バス停近く奥多摩ダムに向かって国道411号の左手にある公共の無料駐車場(トイレ有)に車が置けます。

国道の右手の舗装路が水根沢林道入口です。

林道入口から水根沢キャンプ場を左に見るように進み水根沢のすぐ上を行くようになった所から入渓します。

入渓点は小砂利の河原になっています。

そこで身支度を整えます。

入渓点で身支度を整えます

 

【遡行】

透明で豊かな水流に入ります。

丹沢と標高は変わらないのですが、山塊が少し北にあるせいか、水は丹沢のそれより冷たいです。

両岸に迫る岩はチャート、放散虫が堆積して出来た岩です。

それが水流で削られしぶきで濡れ、黒っぽく滑らかです。

沢の両岸はコケの深い緑色が数メートルの高さまで覆っています。

10分ほどで、釜のある滝です。

釜の水深は膝から腰まで年によって異なります。

水流を左壁に沿って行き、水面から50cmほどの段を上がればあとは立ち上がれるほどの緩斜面の滝です。

でも、その段を上がる動作はちょっとむずかしいです。

油断すると水にザブンとなります。

期せずした何回もザブンしてしまうかも知れませんがそれがとても楽しいから不思議です。

最初の滝は左から、一段上がれないとボチャン

太ももまで水に浸って歩きます。

水流に逆らうので胸まで水が盛り上がってきます。

釜を持った小滝を超える

小滝を超え、水流歩きを3度ほど繰り返すと、深さも幅も50cmほどの樋場で高さ5mの滝とその右上に同じく樋状高さ3mの滝が重なった所に出ます。

3mの滝の所で落ちると下の樋の間に挟まってしまい頭から水をかぶりそうです。

先人達が残したハーケン(岩に打つ釘)もないので、ここは踏み跡をたどって右から巻いた方が無難です。

「巻く」というのは岸を登り藪の中を歩いて滝を超えた所から岸を下りまた水流に戻ることです。

水流を行く

崩れた石組の段々畑を左に見ます。

ワサビ田跡です。

ワサビは畑でも育ちますが、水耕栽培すると何年も連作出来ます。

でも、台風なんかの影響をもろにうける沢の中、手入するのは大変なのでしょう。

両岸が迫ってきてミニチュアのグランドキャニオンみたいになります。

こういう場所をゴルジュと呼びます。

水流が強く深さも腰までになります。

迫る両岸の壁に手がかりを求め、水を押して進みます。

雨が何日も続いていた、台風の通過後などで水圧が強すぎる場合があります。

このゴルジュは突破するより「巻く」方は難しいです(巻いた痕跡が少ない)。

晴れて暑くても入渓すべきでない日に来てしまったのです。

無理せず撤退しましょう。沢が右にカーブする所なら右に登れる尾根がみつかります。30分ほど登れば水根沢林道に出ます。

ゴルジュの突破

ゴルジュを突破すると高さが6m、40度ほどの緩い傾斜、幅70cm深さ70cmの半時計回りの樋状、高さ6m傾斜40度、樋の幅1m弱、に毎秒1トンは水を落とす滝が正面を塞ぎます。

半円の滝です。

滝の手前は腰までの深さの大きな釜になっています。

水の中に足を入れたら強い水流に流されてウオータースライダーのように下にすべり釜にボチャンと落ちますので、水の上の壁を左右の足でつっぱりながら登ります。

半円の滝

筆者の数回の水根沢経験ではボチャンと落ちて怪我をした人はいませんが、釜の底の地形は年によって変わり把握は出来ませんから、落ちない方が良いです。

上からロープで吊るしてもらいながら登りましょう。

ロープを吊るすための確保方法は現在一般的になっている確保者が手を放しても自動的に停止する方法(ATCガイド,ルベルソーキューブ等によるセカンド確保方法)は水流に吊られた状態でロックされる危険があるので避けて下さい。

下降させることが容易な確保方法(ハーフマストビレーやエイト環ビレー)でなければなりません。

半円の滝から30mほど上流の右手(左岸)にある踏み跡を登り水根沢林道に出て下山するパーティが多いです。

なんと、バス停まで50分で下れます。

でも、もし時間が許すならば、さらに水根沢を上に進むことをお勧めします。

沢の様相は一変し小滝、コケの絨毯、現役のワサビ田の間を縫ってゆるやかに水が流れます。

これまで激しい水の流れの圧迫から解放され、庭園の中を行くようなウォーターウォーキングが楽しめます。

それを2時間、右の大きなワサビ田の上に道が見えて来ます。

水根沢林道です。

林道はどんどん沢に近づいて来て沢を横切ります。遡行終了です。

 

【下山ルート】

林道が水根沢を横切った所から1時間で水根バス停に下山出来ます。

道はよく踏まれていて歩きやすいです。

水根バス停が近付と道標もあるので迷うことはないでしょう。

水根バス停近くの公共駐車場の存在は濡れた体にはありがたいです。

英国から沢登りに来た

 

イギリスの方もシャワークライミング

著者:松浦寿治

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