◇賤ヶ岳(しずがたけ)(滋賀・長浜市=421メートル)
◎琵琶湖など一幅の水墨画 秀吉、勝家の合戦場
琵琶湖の北、奥琵琶湖と呼ばれる地域にある。
JR北陸線の木ノ本駅付近から西方向に見える穏やかな山並みで、織田信長亡き後、羽柴秀吉(のちの豊臣秀吉)と柴田勝家が雌雄を決した「賤ケ岳の合戦」の地だ。
周辺には合戦の戦跡が数多くある。今回はいくつかあるアプローチの中で比較的楽に登れ、達成感も味わうことができ、それでいて歴史や自然、そして展望も堪能できる欲張りコースを紹介する。
JR余呉駅で下車し、江土集落の登山口を目指す。
民家の間を抜けて登山道へ。往時をしのびながら広い道を登ると、まず岩崎山の高山右近の砦(とりで)跡へ。
この辺りから緩やかな登りで、大岩山の中川清秀の砦跡、秀吉が陣を敷いたという猿が馬場などへと続く。
木立の間から余呉湖を眺めたり、杉の木に巻きつけられたテープを見て「ツキノワグマが樹皮をはぐクマハギの防止に効果があるのか」との疑問をもってみたり。
山頂に近づくと、勾配が少し急になってくる。
この頑張りどころを過ぎると、ほどなく山頂広場である。
展望は北に余呉湖や湖北の山々、西には琵琶湖、南は山本山へと続く縦走路、東には木之本町。
それぞれが一幅の水墨画のようで本当に美しい。広い山頂には戦跡碑、武将像、砦の案内表示、3等三角点がある。
確認してみるのも面白い。
トイレやあずまや、自販機もあるが、ゴミは必ず持ち帰ること。
山頂から少し下ると、木之本町方面へのリフト(営業日、時間は要確認)を利用し、下山することもできる。
今回は別コースを取って、余呉湖の湖畔に立つ国民宿舎余呉湖荘(休館中)へ向けて下山する。
階段状の下りなのでゆっくりと膝のバネをきかせるように歩こう。
飯浦(はんのうら)切通しからはなだらかになり、余呉湖荘登山口に出てくる。
余呉湖は周囲約7キロ、駅までの舗装路は東西どちらから回っても良いが、湖北部にある天女伝説の衣掛柳は是非見ておきたい。
この先から、登った賤ケ岳を望むことで、さらに山への思いが深まるだろう。
(関西山岳ガイド協会 荒木研一)
【ガイドの目】
◎夏は涼風に元気もらう
湖北に位置するため冬は雪が深いが、他のシーズンは快適に歩ける。
春は桜、秋には紅葉が楽しめる。
夏は水分をこまめに取り、熱中症に注意。
ただ、木立の間から涼風に元気をもらえる。
歩き始める前には、登山口近くの余呉湖観光館に立ち寄ると、情報収集ができる。
山中は水場が無い。トイレは駅、観光館、山頂のいずれかを利用するとよい。
近くには北国街道「木之本の街並み」をはじめ見どころが多い。
▽参考タイム
余呉駅(1時間)猿が馬場(1時間)賤ケ岳(40分)余呉湖荘(50分)余呉駅
提供:共同通信社