富士山、ぐるっと三昧ガイド〜「世界文化遺産富士山」の魅力を考える〜


「晴れてよし曇りてもよし富士の山 もとの姿は変わらざりけり」と幕末の政治家山岡鉄舟が剣の悟りを得たときに詠んだ歌です。

厳しい天候や環境に関わらず常に堂々として「富士山は富士山であり続ける」のを「逆境に常にさらされる人の生きざまに例えています。

2013年6月、富士山が世界文化遺産に登録されました。

富士山の世界遺産登録は、富士山の自然はもとより宗教性や芸術性を見出してきた日本人の自然観や文化観が国際的に認められたといわれています。

日本アルプスはもちろん、遠くは上信越国境の山々や紀伊半島の山からも眺めることができ、その雄大で美しい姿を見るとかならず歓声が上がります。

まさに日本人の心のランドマークといっても過言ではないでしょう。

古の人々から信仰の対象ともなり、その雄大で美しい姿は 芸術の世界でも大きな影響を与え「人々の生活と共生してきた」ことは大変な驚きでもあります。

果ては銭湯の壁にも書かれ身近に感じてきた山でもあります。

富士山の夏山シーズンも9月中旬で山じまいとなります。

2015年の7月1日~9月14日の富士山登山者数は23.4万人と昨年発表されましたが、2016年はどうだったのでしょうか?

この20数万人という登山者数は世界一の登山者数といわれています。

深田久弥は日本百名山の中でこういう表現をしています。

「この日本一の山について今さら何を言う必要があろう。かつて私は「富士山」という本を編むために文献を漁って、それが後から後からでてくるのにサジを投げた。おそらくこれほど多く語られ、歌われ、描かれた山は、世界にもないだろう」と・・・

まさしくその通りでこの感想は現在でも共感できるものです。

あまりに大きくあまりに奥深い富士山のことなど筆が進むはずもなく深田久弥をして「偉大なる通俗」と云わしめています。

今回は「富士登山」というより「富士山の周辺や山麓の自然」などの個人的な好みに偏りますが「富士山頂を極めた」あとの楽しみ方のほんの一部のご紹介をさせていただき、十分ご存知の「今さら情報」ですが、皆様の今後のご参考になればと思います。

特に馴染みの深い関東・東海の方々よりも全国の登山者の方達に富士山の魅力を少しでも感じていただければと思います。

それでは富士山山麓(ぐるっと)の楽しみ方の情報です。

  1. 富士山の天候チェック
    富士山は気流の影響で海側は雲がかかりやすい事が多いのですが、こういう時に北側の山麓はどうなのかを知りたい時に便利なのが山中湖村観光課公式サイトの「絶景くん」と「絶景ちゃん」の富士山ライブカメラ
  2. 富士山と自然の学習
    富士山の山麓には世界遺産センターなど様々な研究施設やイベント施設、学習施設がたくさんありますが、1番のおすすめは日本の生物多様性の総本山ともいえる「環境省自然環境局 生物多様性センター」ですね。
    ルライン料金所付近の自然に囲まれたとても静かな場所にあり、シアターもある立派な施設には驚かされます。
    半日はゆったりと学習したいものです。
  3. ダイヤモンド富士

    ダイヤモンド富士

    富士山山麓の楽しみ方のひとつに「パール富士」「ダイヤモンド富士」があります。
    日没と日の出時間に富士山頂に沈む夕日や月、山頂から上がる太陽などは1年間のうちでも場所と日にちが限られますので事前に「時間と場所」の特定が必要になります。季節と天候にも大きく左右されますが、カシミール3Dホームページに計算サイトの紹介があります。
    「ダイヤモンド富士」についてはやはり登山者としては本栖湖畔の竜ヶ岳山頂からの景色が裾野のスケール感と雄大さ、富士山の姿が美しいこと、冬でも晴天であればさほど登山が難しくないことなどお勧めです。

    竜ヶ岳

    竜ヶ岳山頂

  4. 富士山のお祭り

    吉田の火祭り

    夏祭りなど山麓では古くからの歴史あるお祭りがたくさんありますが、必見は毎年8月月末にある、日本三大奇祭「吉田の火祭り」ですね。松明の火というのは人を惹きつけるものがあり感激のひとことです。

  5. 富士山裾野の「ぐるっと絶景」
    • 須走口5合目から登る小富士(1979m)は須走口5合目から遊歩道コース、といってもコメツガ・ダケカンバなどの樹林帯の岩道の混じる登山道ですが、コースタイムは往復1時間余り、いきなり明るい砂礫地の山頂へでて、富士山を見上げると10月から11月にかけてカラ松の紅葉に感動を覚えます。山中湖・丹沢・箱根の展望がとても美しいところです。

      小富士山

      カラ松紅葉

    • 北口本宮富士浅間神社から二合目までの遊歩道ハイキングでは春から初夏にかけては富士桜やレンゲツツジの混生群生地の中を通り抜けます。また交通利用で馬返しへ行き、ここから5合目の富士山唯一の通年小屋佐藤小屋へ登る吉田口登山道ハイキングは歴史を感じるとても静かな森林浴の径です。 小屋宿泊もよし河口湖5合目まで足を延ばして下山することもできるおすすめコースです。
    • 富士山の南東斜面にある火口の宝永山は富士宮口5合目から登山道が整備されています。落石など十分に注意しながらの登山となります。森林帯の宝永遊歩道と6合目を経由しての2コースがあり休憩を入れて約2時間の往復コース。 11月初旬までは登山は可能ですが防寒着など登山準備は十分にして登りましょう。 天候が良ければ絶景が待っています。
    • 最後はご存知の御中道(おちゅうどう)お中道とは富士山の五合目辺りをぐるっと一周する道で、富士山に3回以上登山をしたものだけが歩くことを許される道、と昔は言われていたそうです。現在はその4分の1周程度しかできなくなってしまいましたが、一味違った富士山を楽しめるトレッキングコースとなっています。富士山を左手真上に見上げながら歩く道は特異な景観が続き奥庭では素晴らしい景色が広がります。富士スバルライン5合目からの往復時間は約5時間のしっかりした登山となりますが、奥庭からは短縮もできます。

この他にも景勝地や展望地など数多くあり樹海の森林帯にもブナの森や貴重な高山植物もありお花好きにとっては垂涎の森もあります。

「富士登山」の他にも機会があれば何度訪ねても行き尽せない多くの表情を持つのが「霊峰富士」といえると思います。

「富士山深訪」は一生続くと思いますがこのような虜になった私のことを「富士の病ふじのやまい」という方もおりますが、この病なら治らなくてもいいですね。

 

著者:土居剛

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