◇普賢岳(ふげんだけ)(長崎・雲仙市=1359メートル)
◎悲劇のドーム、眼前に 四季楽しむ雲仙の主峰
島原半島中央の雲仙火山群の主峰だ。
一帯は1934年に日本初の国立公園に指定されたが、90年11月に大噴火し、翌年、火砕流により43人の犠牲者が出る惨事が起こった。
悲劇の山として記憶に刻まれている。
この大噴火で生まれた溶岩ドームは標高1483メートルまで隆起し、平成新山と名付けられた。
火山活動は沈静化したが、入域禁止中。登山できる普賢岳頂上から、荒々しい溶岩ドームを望める。
四季それぞれ登山者でにぎわう。初夏は10万本のミヤマキリシマの大群落。
秋にはコミネカエデなど多くの植物が鮮やかに色づき、冬は「花ぼうろ」と呼ばれる霧氷の輝きに包まれる。
ルートは仁田峠のロープウエー駅横より妙見岳(1333メートル)山頂下の妙見神社から国見分かれを通り、噴火後の安全が確認された鬼人谷(きじんだに)へのコースと、駅舎右の普賢神社拝殿前から入るあざみ谷コースがある。
ただ、鬼人谷途中が土砂崩れで一部通行止め(9月現在)のため、鬼人谷部分をカットして紹介する。
仁田峠が登山口だが、駐車場は長時間の駐車が難しいため、麓の池ノ原園地(駐車約50台)に車をとめ、仁田峠まで整備された登山道を約40分、トレーニングを兼ねてゆっくり登るとよい。
仁田峠からは妙見神社へ約1キロの急登だ。妙見神社から国見岳への尾根を分岐点・国見分かれに向かう。健脚者は分岐から国見岳(1347メートル)への急登を25分ほど登り、頂上から普賢岳や有明海の展望を楽しもう。
戻って、分岐から鬼人谷分かれと呼ばれる鞍部まで急斜面を慎重に下る。
紅葉シーズンには国見岳東斜面が紅、黄、緑の見事な三色に染まる。
鬼人谷分かれの右手が紅葉茶屋(茶店はない)。
普賢岳とあざみ谷の分岐で、ここから30分、溶岩を縫って登ると普賢岳の頂上だ。
山頂からは、枯れた樹林の上方に固まった溶岩が積み重なる平成新山がすごい迫力で眼前に迫る。
南に天草灘が広がり、遠く霧島、桜島、阿蘇、くじゅうの山並みも見渡せる。
下山は、紅葉茶屋まで急な斜面を慎重に下る。一休みし、整備されたあざみ谷への登山道を1時間余りで仁田峠に着く。
(日本山岳ガイド協会 柿木信夫)
【ガイドの目】
◎下山後に温泉の楽しみも
全体的に危険箇所は少なく、子どもでも楽しめる。しかし、長崎県の最高峰の一角でもあり、足元はトレッキングシューズか登山靴が望ましい。
9月からは装備も次第に秋~冬支度となる。
山中にはトイレがないので仁田峠登山口で済ませるとよい。途中水場もない。
ロープウエー事務所では普賢岳登頂証明書を1枚100円で発行している。登山記念に講入してもいい。下山後は雲仙温泉、小浜温泉で日帰り入浴温泉を探し、疲れを癒やして帰路につこう。
▽参考タイム
仁田峠駐車場(40分)妙見神社(30分)国見分かれ(10分)鬼人谷分かれ・紅葉茶屋(30分)普賢岳(20分)紅葉茶屋(25分)あざみ谷(45分)仁田峠駐車場
提供:共同通信社