根を上にして倒木がかかった滝の上部

丹沢・大山川〜沢登り紀行(8)〜


大山の阿夫利神社(あふりじんじゃ)は雨乞に御利益があるとされ、2千年も前から信仰され登山されて来ました。
現在、首都圏南西部のハイキングのメッカ的存在として春と秋の休日の表参道登山道は山頂までとだえることのなく賑わっています。
中腹まで登れるケーブルカーも昨年にリニューアルされました。

大山には一般登山道だけでなく、大山北尾根~大山、三峰山~大山、蓑毛~春岳沢~大山、大山ケーブル~大山川~大山といったバリエーションコースもあってよく登られています。

中でも大山川は高さこそ低い(10m以下)ですが、垂直で登攀的な滝が4つほどあります。
それらの滝は登り方を変えれば(フリーで、人口登攀で、高巻きで)初心者から熟達者まで楽しむことが出来ます。
一度も足を濡らすことなく遡行出来るので寒い時期でもオーケー、「冬でも登れる沢」です(夏も涼しく登れます)。
来シーズンの沢登に備えて、「トレーニングの場」としても適しています。

【アプローチ】

伊勢原駅から大山ケーブル駅まではほぼ20分おきにバスが運行しています。
マイカーで行かれる方は大山ケーブル駅下のバス停付近に無料駐車場がありますが駐車場が混む可能性が高いので、休日は朝早く行くようにして下さい。

大山ケーブルバス停からケーブル駅まで緩い階段のある幅3mほどの舗装路を30分登ります。
道の左右は土産物屋や豆腐料理屋、宿坊が並んでいます。
その昔、大山詣の人達は宿坊の宿泊費代わりに大豆を持参する人が多かったので豆腐料理が名物になったそうです。

ケーブルカーに乗って10分で阿夫利神社駅です。
ケーブルカーに乗らずに登山道を使っても良いです(阿夫利神社まで1時間弱)。
ケーブルカーを降り、通路をたどって広場に出ると、正面に数件並ぶ土産物店があります。
左端店の左にある階段を下って日向薬師方面の登山道に入ります。
10分で大山川を渡る橋です。
橋は大山川の最初の滝である二重滝の見物ポイントになっています。

二重の滝のすぐ右に二重神社があり、神社前の小広場で身支度を整え、梯子で大山川に降りて入渓します。右岸の橋のたもとからも入渓出来ます。

二重の滝の前の橋から二重の滝、右は二重神社

【遡行】

まずは二重の滝を登ります。

滝の水流の左は傾斜70度くらいで手がかりが多くやさしい岩登りです。
流の右は垂直です。
そこに打たれているボルトやハーケンは古いので、リードクライミングはせずに左のやさしい側から登って、立ち木を利用して「セルフビレーをセット」、上からロープを投げて、後続に登ってもらうようにすると安心です。

ボルトにスリングをかけそのスリングを手がかり足がかりにして登る人口登攀(A1)か、スリングを使わないでフリーで登ってもらいます(5.10d)。

滝の上の人に話を戻して、「セルフビレーをトル」と言われる方が多いのですが、「トル」だと初心者方の場合はセットするのか解除するのかがわかりにくいです。
「セルフビレーをトッテ待っていてください」だと、後続はリーダーの「セルフビレーをトッテ」しまう、つまり解除してしまう可能性があります。
まぎらわしい用語は、使わない方が良いでしょう。

二重の滝右をフリーで登る

二重の滝を超えると登山道からは見えなくなり沢登りする者だけの世界となります。
風もなく(沢の中なので)水の流れの音も小さく、自動車通りから図書館の中に入ったような静かさとなります。

自然林ですが、木に囲まれすぎていないので明るいです。
冬場は葉が落ちているので、陽差しがあれば暖かです。
沢床の岩は灰色ですが、大雨の後だと流水に磨かれて草餅の表面のような緑色になります。

反対に大雨の後でなければ水流の幅は50cmくらい、チョロチョロとしか流れていません。
水の流れていない沢床の部分が多く、水に入らないで歩くことが出来ます。
ここから源頭部までのほとんどが同じ状態、つまり、大雨の後でないかぎり水の中に足を入れることのない沢なのです。
なので、沢シューズでなくて登山靴(運動靴も可)でもオーケーです。

手がかりの多い小滝が3つほど続いて、5mの垂直の滝が現れます。
30年に渡って、中央に倒木が立てかかっていたのを見て来ました。
でも、2016年の4月に行った時には、その倒木が右端に動いていました。
昨年、めったにないような増水があったと思われます。
「これまではこうだった」というのが当てにならない昨今の激しい気象の状況を改めて認識させられました。
その倒木のかかった滝は簡単に巻けますが、滝の中央に残された古いボルトとハーケンにスリングをかけてそれを手がかりに強引に越えるとちょっと手強くて楽しめます。

落葉、木漏れ日。
蒼い空、他のメンバーが滝を登るのを待っている十数分、じっとして動かない間を素敵な時間にしましょう。

とよ状の滝を楽しむ

さらに小滝を4つほど越えて進むと8mの滝と10mの滝の連続になります。
8mの滝は右側に太い倒木が根を上にした逆さ状態でもたれかかっていて、その木に沿ってロープが固定されています。
固定ロープに沿って登り、倒木の根を乗り越えるか左に巻くかして滝の上に出ます。
連続している10mの滝は手がかりの多く左から簡単に登ります。

そうそう、固定ロープには切れないとか外れないとかの補償はありませんから、自分達のロープを使って登りましょう。

一般論として、固定ロープ、残置ハーケン、残置スリング等は抜ける可能性があります。
電気ドリルを使って設置されたクライミング用のボルトであっても信頼してはなりません。
ボルトの回りは流水に洗われ、岩が激突したかも知れません。
沢とは風化し流水に洗われ、変化して行くものです。

根を上にして倒木がかかった滝の上部

しばらくゴロゴロ石の河原を行くと二俣になります。
磁石の指す大山山頂の方向と右俣の方向が一致します。
左俣だと表参道の途中に出てしまいますので、右俣に進んで下さい。

10分ほど行くとトイ状の5m滝になります。
トイの中に入り、手と足を左右につっぱるようにして登るステミングの登りが楽しめます。
左から簡単に巻くことも出来ます。

次は奥の二俣、右俣が滝をかけて入って来る枝沢のように見えるので、少し広い左俣の方に行きたくなりますが、ここは右俣を行きます。
階段状で簡単な滝を登って、少し尖った石片が敷き詰められたような沢床を行くと左の斜面にトラロープ(巻きコース)が下がった垂直7mの滝に着きます。

これが最後の滝です。

ロープを出して滝の右を残置のハーケンにロープをクリップしながら登って下さい。
上部は浮石が多いので確かめてから力をかけるようにして慎重に登りましょう。

滝の下にいる人は上からの落石が来ない場所で待ちましょう。

水に削られた丸みを帯びた石でなくて尖った石の沢床であったことを思い出して下さい、尖った石は新しくしかも頻繁に落石がある場所であることを示しているのです。

岩場の上に人がいれば落石が来ると知っていましょう。

最後の滝の上部、落ちそうな岩がたくさんあるので注意

最後の滝を越えると小さい砂利の沢床となります。
20分ほど沢床と忠実に辿って高度を上げて行きます。
砂利から土の急斜面になる所で水平にトラバースして右の尾根に乗り上がります。
踏み跡のある尾根の稜線を10分登ると大山山頂直下、日向薬師バス停に下る登山道に出ます。
ヤブコギはありません。

子砂利のような沢床をつめて行きます。

【下山ルート】

大山山頂で相模湾と厚木や藤沢方面の平野がみわたす絶景を楽しんだら、たくさんのハイカーに混ざって下山します。

表参道をケーブルカー阿夫利神社駅に下り1時間です。
休日だと人混みの中を行くようになります。

ケーブルカーの最終は休日が17時、平日は16時30分です。
ケーブルカーに観光客が並んでいて長く待つ場合は大山ケーブルバス停までさらに1時間歩いて下りましょう。

山頂からイタツミ尾根をヤビツ峠に下れば人通りは少なく50分で下れます。
でも、ヤビツ峠発のバスの便が少ないので注意して下さい。
(平日は9:16発と15:41発の2本のみ、休日は1時間に1本で、最終は17:41)。

著者:松浦寿治

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