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幕営風話(2)~登山届~


登山計画、または登山届というものがある。

登山前の準備作業のひとつを指すものだが、それを実践する人の数は登山者の総数と比べると多くない。

入山者数が国内で最も多いといわれる長野県でさえ登山届の提出率は全体の30%程ということらしい。

他県に至ってはそれを大きく下回る10%前後の山域もあるようだ。

このような状況を憂い、問い掛けでもするかのように、最近の山岳事故・遭難のニュースでは、登山届を出した、出していないということまで話題に上げられるようになった。

 

今回は「登山届」を出すことの是非を問う前に、そもそも登山届とは何なのか?についてクローズアップしてみたい。

 

先ず、登山届について間違った認識を持っている方々がいるので少し修正したい。

コンパスにも問合せがあるが、「登山届を提出することで救助してくれるのですか?」「下山通知を出さないと警察が捜索を始めるのですか?」という質問がある。

登山届を出して事故や遭難を起こすと警察が救助・捜索を行ってくれる、または登山届のスケジュール外の時間になると警察が心配してくれる、などと勘違いしているケースだ。

警察の原則的な立場として、救助や捜索を行うには当事者または家族や関係者から要請が無い限り初動に出ることはない。

つまり、家族などから要請を受け、救助や捜索の際の情報源として登山計画等を活用することが本来である。

このような前提で警察関係者が語ってくれた過去の事例を紹介する。

 

ある登山者の家族から、息子が山から帰ってこないと警察へ捜索要請があった。

しかし家族は登山者の行動予定を把握していなかったので、警察は捜索範囲を特定することができなかった。

そこで登山口のポストから登山届を回収し、該当者の登山届を探し出し、登山ルート等を把握するために情報収取を行うことになる。

しかしその作業は各所のポストから登山届を集めて探し出すことになり、緊急を要するケースでは初動までに時間が掛かることになる。

登山届が出されていない場合はなおさら困難で、雪山などで不明になった場合、最悪は雪解けの時期まで手の施しようがないこともあるそうだ。

山岳会などに所属する登山者や職業登山者は仲間と登山届を共有していることが多い。

そこで個人登山者の方々も友人や家族と登山届を共有し、自分の山行スケジュールを誰かに伝えることを習慣にしてもらいたい。

それは自分の安全を担保することにもなるからだ。

コンパスの機能では近親者との共有や警察による不明者の閲覧が瞬時にできるようになった。

 

それでは、家族や友人と登山計画を共有できれば登山届けを出さなくてもいいんじゃないかと思うかもしれない。

しかし早計な判断はちょっと待ってほしい。

コンパスと協定を結んでいる警察や自治体では、登山届を出した当事者を探すだけではなく、遭難者と同じルートや時間帯を山行する他の登山者からの目撃情報を得るための手段としても使うことがある。

いわば登山届が登山者同士の相互扶助のネットワークになっているということだ。

また、従来の紙で提出する登山届では入山地で提出することになるので、複数の県境をまたぐ山行スケジュールで、他県側で事故遭難があっても登山届を共有することがなかった。コンパスはその共有化を可能にしている。

さらに、山岳エリアで噴火等の自然災害が起こった時、救助隊が登山者の山域分布を把握したり、下山通知機能によって下山者を確認し、捜索対象から除外することができたりする。

この機能は御岳山噴火の際にも確認された。

 

登山届の意味を説明しながらコンパス登山届の機能にも触れてみたが、何はともあれ、登山計画とは、そもそも提出する行為が主体ではない。

本来は自分が登ろうとする山岳に目を向け、山行の諸状況やルートを確認、把握し、安全登山を実践するための計画立案が目的である。

そしてその計画を提出して家族や友人、警察等と共有し、リスクを少しでも減らすことが安全登山の第一歩であることを理解してほしい。

災難は決して対岸の火事ではなく、いつどこで起こるか誰も予測できないのだから。

 

 

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