スノーシューで蔵王樹氷原を歩く~スノーシューで楽しむ雪山のすすめ~


2月12日。

私は蔵王連峰、蔵王ロープウェイの山頂駅に立っていた。

天気は晴れ。

神々が創ったとしか思えないような造形、モンスターのような樹氷群が、目の前に並んでいる。

今日はこの樹氷群の間を縫って歩き、ロープウェイの中間駅まで下る予定だ。

じつは翌日からのガイドの下見で、明日はこのルートを参加者とともに歩き、あさってはこの樹氷原を俯瞰しながら、地蔵山を越えて熊野岳を往復する行程だ。

スノーシューを装着し、お地蔵さまを拝んでから出発。

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高さ数メートルに及ぶ白いモンスターたちに囲まれて歩くと、おとぎ話の世界に入り込んだかのような、現実離れした不思議な感覚に包まれる。

スノーシューの魅力の一つは、夏道のない場所でも、こうして歩いて楽しめることだろう。

アラスカ先住民の生活道具がルーツのこの道具は、私たち二足歩行動物にも雪上での浮力をもたらし、森で暮らす動物たちと同じような行動を可能にしてくれる。

観光でここを訪れても、山頂駅周辺からただ眺めるだけ。

スキー場のコースからでも、ここまでの不思議な感覚は体感できないだろう。

大自然の懐に入って歩いた者のみが得られる、包まれるような一体感。

それを可能にしてくれる、スノーシューという道具に感謝。

 

足元の雪はふかふかと柔らかく、まるで綿の上を歩くかのような浮遊感。

これが非日常感覚を加速してくれる。ときどき埋もれた樹の枝の下に空間が残っていて、そこを踏み抜くとズボッと腰まで埋まってしまうのはご愛嬌(笑)

頻繁にウサギの足跡と交差する。

ピョコタンとのんびり歩く、歩幅の短い跡。脱兎のごとく走った、歩幅2m近い跡。

立ち止まり、枝の先端の冬芽をかじった跡。動物たちのさまざまな暮らしぶりが、足跡から想像できる。

ちなみに、日本の野生動物で瞬間最大速度が最も速いのは、ノウサギなのだとか。ウサギ侮りがたし・・

 

どんなルートを辿れば、明日の参加者にいちばん喜んでもらえるのか。

なるべくスキー場のコースやリフト、ロープウェイの鉄塔などが見えないように保ちながら、かつ安全で困難でないルートをとってゆく。

遠くに飯豊連峰、朝日連峰が浮かんでいる。空は濃いブルーで、樹氷は純白。

このコントラストも、雪山ならではの醍醐味だ。

やがてロープウェイ中間駅の前に出る。

ふたたびロープウェイに乗って山頂駅に上がり、樹氷ライトアップを待つことにしよう。

夕焼けや夜景と、樹氷ライトアップとのコンビネーションも、また昼間と違った趣がある。

 

春夏秋の山を楽しんでいるが、雪山はちょっと・・と思っている方。

アイゼン・ピッケルの世界は体力的・技術的・経済的にハードルが高いなと感じている方。

スノーシューで比較的手軽に雪山を楽しむ、こんな楽しみもあることを、ぜひ知ってほしい。

(ただ、手軽といってもそこは雪山。もともと道はないことが前提なので、初心者同士は絶対に禁物。必ずガイドや経験者とともに楽しみたい)

 

日本の雪山、とくに雪の森は美しい。

地球上で、これほど雪と生活が密接にかかわり、身近に雪山を楽しめる場所がある地域は、それほど多くはない。

まして今回の樹氷など、これほどの規模で発達した樹氷が広く見られるのは、世界中でも日本の奥羽山脈にほぼ限られると聞く。

せっかく四季に恵まれた土地に暮らしているのだから、冬だけオフシーズンにしてしまうのは、じつにもったいないではないか。

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【後日談】

「これなら、気温さえ何とかもってくれたら、明日みんな大喜びだね!」と語りあった翌日、予報通りの気温の急激な上昇で樹氷はドラマチックなまでに7割方なくなり、翌々日14日の雨ですべて消えてしまった・・

自然は必ず遷ろう。いつも行けばそこに同じ楽しみがある遊園地と違い、自然は遷ろうからこそ美しい・・と自分に言い聞かせながら、2月にしては妙にぬるい雨雲の空を見上げたのだった^^;

 

著者:橋谷 晃

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