◎プロガイドが全国低山紹介
中高年愛好者に山ガール。国民の祝日「山の日」も今年から始まる。ブーム拡大の気配。だが、山は富士山やアルプスだけではない。価値も高さだけではない。全国には味わい深い低山がある。四季折々、地元や故郷の山に親しんではいかが。日本山岳ガイド協会所属のプロが、47都道府県にある標高1000メートル内外の名低山を紹介する。遭難防止への願いも込めて。
◇明神ケ岳(神奈川・南足柄市、箱根町=1169メートル)
◎絶景、雪の富士山 明るい冬枯れの山
明神ケ岳は箱根外輪山の一角にあり、明星ケ岳と結んだ尾根からの眺望は壮大。コースは道了尊(どうりょうそん)から登り、箱根側の宮城野へ下るのがポピュラーだ。明るい冬枯れの尾根からの富士山は絶景で、風さえ弱ければ、冬の柔らかな日差しを浴びて開放感ある山を楽しめる。
道了尊でバスを降りたら14世紀建立の古刹(こさつ)、大雄山最乗寺の杉並木の広い参道を進む。赤い大きな鉄製の和合下駄(わごうげた)の脇が標高300メートルの登山口だ。小さな橋を渡り、杉林の急なジグザグ道を登って右に曲がり緩やかな登りになると12体の石仏が迎えてくれる。しばらく単調な登りが続くが、送電線をくぐって林道を渡ると標高680メートルの見晴小屋に着く。
少し登ると防火線の草原尾根道に変わり、視界も開ける。春夏には多くの花々が目を楽しませてくれるだろう。ススキの原が切れたあたりに神明水の水場がある。急坂を登り、草原の尾根から樹林帯を巻いて登り抜けるとクマザサ原に出る。外輪山の尾根筋に当たり、しばらく行くと右に頂上への道が伸びる分岐。ひと登りで山頂だ。
頂上は裸地で360度の眺望は壮大。手前に金時山を従えて、雪の富士山。丹沢、箱根、伊豆の山並みから大島、さらに小田原の町並みや横浜、三浦半島や房総半島までパノラマが素晴らしい。
帰路は明星ケ岳方向へ、開けた稜線(りょうせん)をたどる。無線中継所を過ぎて急な下りで鞍部に出る。天候次第では、右へ宮城野への近道を取ろう。約1時間で集落へ出る。急な下りで、しっかりした靴底のシューズで降りたい。
余裕があれば、そのまま緩やかな起伏の草尾根を明星ケ岳へ向かってもよい。山頂は石碑がなければわかりにくく、眺望はないが、尾根の先に明るい相模湾が広がる。宮城野へは山頂からわずかに戻った分岐から左に降りる。途中右手に、大文字焼の「大」の字の切り開かれた山肌を通り、急な低木帯を下って林道に出れば宮城野はすぐだ。
時間があれば箱根登山電車の強羅駅まで20分ほど歩き、温泉を楽しむのもいい。(日本山岳ガイド協会 大蔵喜福)
▽地図 国土地理院2万5千分の1「関本」「箱根」
【ガイドの目】
◎強風時は子連れ避けよう
なだらかで明るい草原状の尾根道は状態も良く歩きやすい。ただ、冬は霜柱でぬかるみができ、滑りやすいので、明星ケ岳からの下りの急坂は特に注意が必要だ。
また冬場の強風の際は、小学校低学年程度の子供連れで歩くのは避けた方がいい。
水は神明水にある。その上にも水場はあるが、枯れることがあり、ここで水を補充することを勧めたい。トイレは道了尊ですませることだ。
▽参考タイム 道了尊登山口(50分)見晴小屋(30分)神明水(1時間)明神ケ岳(45分)鞍部(1時間)宮城野。明星ケ岳経由では約2時間で宮城野。道了尊までは伊豆箱根鉄道大雄山線大雄山駅からバス。宮城野から小田原へもバス。
「明星ケ岳へのルートから望む明神ケ岳(左奥)」
「明神ケ岳から望む富士山。手前は金時山」
更新日:2015年11月7日
提供:共同通信社