◇高野三山(こうやさんざん)
(和歌山・高野町、九度山町=摩尼山(まにさん)1004メートル、楊柳山(ようりゅうさん)1009メートル、転軸山(てんじくさん)915メートル)
◎開創1200年、歴史の山 世界遺産、四季の自然も
平安時代に弘法大師空海によって開かれた真言宗の聖地、高野山は今年、開創1200年を迎える。
そこはハスの花に見立てられ、外八葉(そとはちよう)・内八葉(うちはちよう)と呼ばれる山々に囲まれた清浄な修行の地であり、今も多くの人々の信仰の柱となっている。
世界遺産に登録された現代の高野山は、豊かな自然と歴史を訪ねる山としても多くの人々に愛されている。
3月下旬には真っ白なタムシバが芽吹き、呼応するように足もとを白からピンクまでのショウジョウバカマが飾る。
楊柳山付近の山桜は大型連休近くに山を彩り、梅雨には水際の木にモリアオガエルの卵。
森は山アジサイの青に染まる。
夏休みには奥之院の参道でムササビ観察。
秋の紅葉、冬は雪遊び。
大人から子どもまで楽しめる。
中でも今回紹介する摩尼山、楊柳山、転軸山は高野三山と言われ、まるでお大師様の御廟(ごびょう)を守るように奥之院を取り囲んでいる。
現在、多くの人が楽しむこの登山道は「女人道」と言われており、高野山が女人禁制だった時代、山内へ入れない女性たちがそこから御廟や伽藍(がらん)を拝んだという。
南海高野線極楽橋からケーブルで高野山駅へ。
バスに乗り換え、奥の院前で下車。
中の橋から奥之院方面へ。
摩尼山登山口から杉の造林地を川に沿って進み、やや急な坂を上がると摩尼峠。
祠(ほこら)を右に見て、少し急な道を行くと摩尼山頂に着く。
山頂から見えた楊柳山を目指す。
気持ちの良い杉の木立の穏やかな尾根道は歩きやすく、木々の間から楊柳山が招くようだ。
しばらくして急坂を少し下れば黒河峠(くろことうげ)。
お地蔵さんを右に見て進み、急な登りを上がりきれば、楊柳山の山頂だ。
自然林に囲まれた気持ちの良い広場で、柔らかな緑に癒やされるだろう。
楊柳山から子継峠(こつぎとうげ)へは緩やかに下る。
子継峠をなおも下り、優しい流れの川に沿って進み、舗装道路を渡れば転軸山入り口だ。
クロモジの茂る山道を上がっていけばやがて杉の木立に囲まれた山頂に到着。
弥勒菩薩(みろくぼさつ)の祠を背にして右へ下り、鳥の池から中之橋霊園へ。
時間があれば、ぜひ弘法大師廟へも。
(関西山岳ガイド協会 伊藤幸子)
【ガイドの目】
◎森林セラピーの基地
三山の標高は915メートルから1009メートルだが、高野山といわれる地域自体が800メートル前後なので、あまり苦労せず登ることができるだろう。
ただ、どの山も頂上直下が急勾配。
また、冬は積雪次第で除雪車が出るほどなので、天気の情報を確かめて行った方がいい。
3月下旬以降は雪の心配はあまりない。
高野山は森林セラピー基地に認定され、さまざまなセラピープログラムが用意されている。
問い合わせは「高野山寺領森林組合」、電話0736(56)2828へ。
▽参考タイム
中の橋(10分)摩尼山登山口(25分)摩尼峠(30分)摩尼山頂(40分)楊柳山頂(1時間)転軸山入り口(15分)転軸山頂(40分)中の橋
提供:共同通信社