◇猿投山(さなげやま)(愛知・豊田市、瀬戸市=629メートル)
◎名古屋市民が親しむ山 1等三角点、恵那山望む
名古屋市の東、広い濃尾平野から見ると標高の割にどっしりとした山容である。
名古屋から「足」に恵まれ、市民が気軽に自然に親しめる山だ。
山名の由来は諸説あるようだが、「景行天皇が伊勢へ赴いた際、かわいがっていた猿が不吉なことを行ったので、海へ投げ捨てた(もしくは猿がいたずらをしたので腹を立て、投げ捨てた)。その猿が、今の猿投山にこもって住んだ」とされる話も伝わる。
名古屋市からは車が便利だが、公共交通機関でも比較的気軽に行ける。
名鉄豊田市駅からとよたおいでんバスで猿投神社前下車。
目の前が古い歴史の猿投神社だ。
神社の門の右にある車道を登っていくと、左側にトイレが備えられた立派な駐車場がある。車ならここに駐車すると便利だろう。
舗装道を進むと左側に観光用のトロミル水車がある。
これは花こう岩の風化したサバ土から陶磁器の原料を作るときに使われていた水車である。
さらに行くと御門杉(みかどすぎ)の道標があり、ここから登山道(東海自然歩道)が始まる。
けっこうな勾配があるが、丸太の階段があり、一部崩壊はしているものの、しっかりと整備されて歩きやすい。
車道を横切り、休憩所を過ぎ、しばらく登ると、昔の参詣道、武田道と合流する。
この辺りから常緑広葉樹などの自然林が目立つ。
東の宮への道標に従って行くと、舗装道に出る。
東に展望台があり、条件次第で三河湾方面が望めるという。
東の宮の階段が始まる鳥居の近くにはトイレがあり、休憩ポイントとなる。
東の宮へ登山道も歩きやすい。
この辺りの桜や杉などの木々は大きく、目を見張る。
東の宮から、登山道を行くとユニークな形をした「カエル石」がある。
ここから猿投山頂まではもう一息。
1等三角点のある頂上からは瀬戸方面の丘陵地帯が望める。
下山は自然林の多い尾根状の登山道を西に進む。
晴天だと恵那山や名古屋市街を見ることができる。
瀬戸側の雲興寺への分岐、通称「赤猿峠」から左の登山道を下る。
猿投七滝の遊歩道を通り、広沢天神社を横に山麓を行くと猿投神社前に戻る。
(関西山岳ガイド協会 保田辰弥)
【ガイドの目】
◎魅力の七滝、温泉も
下山の「菊石・猿投七滝」遊歩道も魅力の一つ。
猿投七滝は、上流から血洗いの滝、二ツ釜滝、白霧滝、千鳥滝、白菊滝、乙女滝、そして落差25メートルという広沢大滝である。
陽気の良いときには快適に散策ができる。
菊石とは、国指定の天然記念物「球状花崗岩(きゅうじょうかこうがん)」で、広沢川の川床や右岸に菊の花のような模様が花こう岩に見られる。
広沢川沿いに下ると、広沢天神社から里山の道が猿投神社までつながっている。のんびりと帰路を楽しもう。車なら帰りに猿投温泉に立ち寄り、一汗流すのも一興だ。
▽参考タイム
猿投神社(1時間半)東の宮鳥居・トイレ(1時間)猿投山山頂(40分)赤猿峠(1時間半)広沢天神社(30分)猿投神社
提供:共同通信社