「ふるさとの山々 高きが故に貴からず」(21)福島【共同通信社提供】


二岐山(ふたまたやま)(福島・天栄村(てんえいむら)、下郷町=1544メートル)

◎ブナ林の山、麓に秘湯  谷文晁が描いた双耳峰

北アルプスの槍ケ岳はどこから見ても「あれが槍だ!」と分かるように、この山も福島県内なら遠く離れていても判別できる。

男岳(おだけ)、女岳(めだけ)の二つのピークをもつ双耳峰であり、この山さえ見つけられればそれを基点に周辺を見分けられる。

天栄村から望む二岐山。左のピークが男岳、右は女岳

江戸時代後期の代表的画家、谷文晁(たに・ぶんちょう)の「日本名山図会」にも描かれた。

江戸時代から知られた山だったのだろう。

山麓にある秘湯、二岐温泉まで以前は細い砂利道だったが、今は舗装道が通じる。

公共交通機関もあるが、便数が少ないので、車利用が便利か。

御鍋(おなべ)神社からの登山道を紹介する。

福島・二岐山。御鍋神社空の登山ルート。

温泉から登山口まで砂利道の林道を二俣川に沿って入る。

徒歩なら約1時間。

車なら登山口手前に50台は駐車可能な駐車場がある。

登山道は林道から右に入ると間もなく八丁坂の急登が続く。

1時間ほど頑張ろう。

中腹のブナ平となる。

登山道半ばのブナ平

ブナ、アスナロの大木があちこちに見られる平たん地で、ここは伐採の残木も多く、秋には紅葉も楽しめる。

ブナ平から男岳山頂まで標高差約300メートルを再び一気に登り、2等三角点のある山頂に立つ。

福島県には多くの山があるが、ここの展望は360度、遮るものは全くなく、南の甲子、那須連峰は白く雪をかぶり、西には会津、越後の山々。

飯豊(いいで)連峰、磐梯山(ばんだいさん)、安達太良山(あだたらやま)など著名な山の展望を独り占めできる。

二岐山頂上からの眺望。残雪の甲子から那須の山々

男岳とセットの女岳(1504メートル)はすぐ北側。

20分なので余裕のある人は足を延ばすとよい。

時間がない人は御鍋神社登山口に下りれば、約3時間半の行程で素晴らしい自然が楽しめる。

この御鍋神社のご神体は、大鍋という珍しいものなので、ぜひ立ち寄ってみたらいかが。

登山道は地元天栄村の山岳会が整備を行っている。

低山でもやや標高の高い山だが、家族連れでも大丈夫。

ただ、山開きは5月下旬(今年は31日)なので、それ以前は役場などにコース状態を確認してほしい。

下山後は、個性豊かな宿がある二岐温泉で汗を流して疲れを癒やそう。

泉質は硫酸塩泉でとても気持ちが良い。

(日本山岳ガイド協会 安部孝夫)

【ガイドの目】

◎女岳からの下山は要注意

女岳から北東側へ下る周回コースを取れば、二岐温泉に下山できる。

ただ地獄坂というロープのある急坂で注意を要する。

また車の場合はスタートの御鍋登山口まで車回収に約1時間を要する。

5月の大型連休まで北斜面には雪が残る年もある。

水場は温泉を過ぎ、二俣川の橋を渡った所にある。

足は車利用が便利だ。

東北道の須賀川インターから二岐温泉まで約45キロ。

公共交通機関はJR須賀川駅から福島交通バスがあるが、1日2便だ。

▽参考タイム

二岐温泉バス停(1時間)御鍋登山口駐車場(5分)登山口(50分)ブナ平(50分)男岳山頂(20分)女岳(1時間半)御鍋登山口(5分)駐車場

提供:共同通信社

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