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那須岳で楽しんだ「寄り道登山」


5月のある日、TVロケの仕事で栃木県・那須岳に向かった。

今回のテーマは「寄り道登山」。

那須岳の主峰・茶臼岳は、山頂に立つだけならロープウェイの終点から、最短40分ほどで登ることができる。

今回はその短さを生かして、山頂の数を稼ぐのではなく、あちこち寄り道することで、心豊かで充実した山歩きにしようというもの。

最初の寄り道は「那須平成の森」。

深田久弥氏が「那須岳はその裾野によって生きている」と書いたように、那須岳の裾野には広々とした那須高原が広がり、その一角のかつて御用邸だった敷地に、遊歩道とビジターセンターが整備されている。

ビジターセンター前で、今日ご一緒するサヘル・ローズさんと待ち合わせ。

サヘル「おはようございます!なんだかいい顔してますね。この仕事やってて幸せでしょう?」

私「はい!いつも自然の中に居るからですよ。おかげ様で幸せです」

サヘル「山や自然の、どんなところが好き?」

私「うーん・・自然の中では、いちばん自分らしい自分でいられるところがいいなぁ。例えば、僕は日本で生まれて、サヘルさんはイランで生まれた。でもこの自然の中では、そんなことは何も関係ない。目の前に美しい景色があり、今それに感動している僕たちが居る。ただそれだけなのが、とても心地いい」

サヘル「そうだよね!そうなんだよね!」

この会話でお互い感性の共通点を感じ、一気に打ち解けてとても楽しいロケに。

萌える新緑の中、音を感じ、光を感じ、色彩を感じ・・私がたくさんの実生(種から出てきたばかりの樹の赤ちゃん)を見つけて、

「歩きながらの目線だけじゃなくて、しゃがんでみるとまた違うものが見えてきますよ」と言うと、

彼女は「地面に腹ばいになって寝ころぶと、もっといいよ!」

「たしかに!!」

実生の目線により近くなるし、身体全体から、大地の温度や感触も感じられる。

このコーナー、私がサヘルさんに、自然の中での遊び方をいろいろ紹介する企画だったのだが、逆に彼女から教えられることが、とてもたくさんあった。

「そうかぁ!その視点、すごい新鮮だなぁ・・たしかに!」みたいなことがたくさんあって、私も感動。

そして那須ロープウェイに向かい、那須岳(茶臼岳)をめざす。

といってもまっすぐ山頂に向かわずに、山腹をトラバースしてぐるっと一周し、ここでも寄り道。

火山から草木が再生するようすを見たり、山の成り立ちの歴史を足裏で感じたり、噴気から大地の鼓動を感じたり、時間に余裕があるので山ランチを作って楽しんだり・・

岩ゴロゴロの荒涼とした風景が、彼女と歩くと宝石の原石を探すような宝の山に見えてくるから不思議だ。

よく「気の持ちよう」というが、同じ場所を歩いても、歩く人の感性のアンテナ次第で、何もないつまらない場所にも、素敵な風景がいっぱい詰まった場所にもなる。

人生も同じかもしれない。

心のあり方次第で、今日1日が、つまらない1日にも、幸せな1日にもなり得る。そんなことを、山を歩きながらふと考える。

そしてガイドの仕事は、今日1日をお客さまにとって幸せな1日にすることなのかもしれないとも思う。

山頂はラッキーなことに青空の下。

じつは諸般の事情でロケ時期が早まり、当初想定していたツツジは咲かず、タカネザクラも咲かず・・だったのだが、そんなことは吹っ飛んでしまうほど、充実した楽しい1日だった。

山頂の数を稼ぐピークハンターもいいけれど、短い行程だからこそ、こんな「寄り道登山」も素敵だ。

(今回の収録分は、6月11日(土)21:00~22:30、NHK・BSプレミアム「にっぽん百名山スペシャル・山が呼んでる!花と緑の峰々へ」で放映されました)

著者:橋谷 晃

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