◇法恩寺山(ほうおんじさん)(福井・勝山市=1357メートル)
◎堂々たる白山の展望台 黄葉の静かな山歩き
この山は、平泉寺白山神社(平泉寺)を起点とする白山登拝道の一つ、越前禅定道(ぜんじょうどう)にあり、福井県側から白山を一望する最初の山である。山名の由来は白山の開祖・泰澄(たいちょう)大師が最初の白山登拝の際、山頂直下に建立した法音教寺にちなんでつけられた。平泉寺も大師が建立し、かつては大変な隆盛を誇った。現在も信仰、観光でにぎわう。
国の名勝の境内は、緑の苔(こけ)のじゅうたんで覆われ、静寂で厳かである。
今回は、林道を利用し、マイカーで中腹まで向かい、登り始める。
勝山市から石川県の白峰への国道を途中からスキージャム勝山への法恩寺山有料道路に入る。
道路はスキー場の端を上り、別尾根のゲレンデ下を回り込んだ後の分岐を左へ。
山麓の平泉寺からの登山道を横切ると、左手林に立派な中ノ平避難小屋が見える。
トイレ、ストーブが完備され、小屋の前には沢水を引いた水場もある。
避難小屋から程なく林道終点。
8台くらい駐車可能で脇には沢が流れている。
標高約1030メートルの駐車場奥から登山が始まる。
山頂まで標高差320メートル余り、距離は約1・2キロだ。
水平に道を進むと、すぐに避難小屋からの道に合流。
杉林を階段状の道が続く。
ブナやダケカンバが見られ、秋には静かな黄葉の中を歩く。
階段の間に石が敷かれた道は、やがて滑りやすい板敷きに。
そして、再度石が敷かれた道。傾斜が緩くなり、空が開けてくると、スキー場と接する。
斜面に出ると、勝山の市街地が望める。
ここまでは整備された道だが、この先は、少し荒れている。
周囲の木が低くなると、もう一頑張り。
平担になり、小さな祠(ほこら)のある法音教寺跡に出る。
山頂まではもう一息。
山頂は広々としており、東側の展望が開けて、白山が一望できる。
主峰の御前峰(ごぜんがみね)(2702メートル)・大汝峰(おおなんじがみね)(2684メートル)を中心に左へ加賀禅定道の尾根、右は別山(べっさん)(2399メートル)を経て美濃禅定道の尾根が連なる。
堂々たる山並みである。
手前は加越国境の山々。
山頂の草地に腰を据え、この大展望を眺めていると時間がたつのを忘れる。
下りは往路を戻る。
(日本山岳ガイド協会 黒川正博)
【ガイドの目】
◎平泉寺に立ち寄ろう
山頂までの距離は短いが、車を降りて程なく上りになる。足元が悪いので、急がずゆっくりしたペースで進もう。下りはスリップに注意。
トイレは中ノ平避難小屋に。水場は避難小屋と駐車場にあるが、沢水で季節によってはかれる。
山麓の平泉寺から登ると中ノ平避難小屋まで約2時間半必要で、ファミリーには勧められない。
下山後は、平泉寺に寄りたい。温泉は道路沿いにスキージャム勝山・温泉大浴場ささゆりと勝山温泉センター水芭蕉がある。
子ども連れなら福井県立恐竜博物館も。
▽参考タイム
スキージャム勝山(車20分)林道終点駐車場(1時間10分)法恩寺山(1時間)林道終点駐車場
提供:共同通信社