◇剣尾山(けんびさん)(大阪・能勢町=784メートル)
◎北摂の名山 歴史味わい展望楽しむ
大阪府北部地域を北摂と呼ぶ。この山はその中の能勢の里に位置し、関西百名山に挙げられる北摂を代表する名山だ。
かつて山上には山岳寺院「月峯寺(げっぽうじ)」があった。同寺の縁起によれば、900年余りにわたり栄えたが、戦国時代に兵火で焼失した。
17世紀に山麓に再建され、戦時中は学童疎開の地になったという。
登山道はいくつかある。
その中で、初心者や家族向きで、達成感も味わうことができ、歴史や自然、そして展望も堪能できる欲張り往復コースを紹介する。
能勢電鉄の山下駅から阪急バスを利用し、20分弱の森上バス停で下車。
豊能自然歩道にて行者口バス停、玉泉寺(元は月峯寺の一坊、ユースホステルも兼ねる)を目指す。
そこを過ぎ、ほどなくすると行者山の登山口。ここで最後のトイレを済まそう。
右手の登山道へ入る。
傾斜は急だが、ジグザグに登っていくので、さほど疲労は感じないだろう。
巨岩が点在し始めると行者堂へ到着。このあたりは奈良の大峰に対し「摂津大峰」と呼ばれる修行の場となっていた。
行者山を過ぎ、炭焼き窯跡、六地蔵と進み、なだらかな台地が目の前に現れる。
この付近が月峯寺跡で、しばし往時をしのぶ。
本堂、鐘楼などの案内板が続き、最後のひと登りで山頂に出る。
山頂広場は花こう岩が点在していて、岩上からは北摂の山々、篠山方面の多紀アルプス、六甲山系や京都の愛宕山などを望むことができる。
標識があるので山々を確認しよう。時間的にも昼食としたいところだ。
下山は同じコースだが、景色が違うので、飽きは全くないだろう。階段状の下りや浮石が所々にあるので、膝のばねをきかせてゆっくり歩こう。
行者山登山口を後にして森上まで戻る。行者口発の午後のバスは本数が限られるが、間に合えば、復路40分の歩行を省略できる。
近辺には能勢栗(ぐり)、能勢米、マツタケ、ボタン鍋といった季節の味のほか炭が名産品である。季節ごとの山村風景も心を和ませることだろう。また町内には皇太子ご夫妻の結婚時、にぎわった小和田山がある。訪ねてみたいものだ。(関西山岳ガイド協会 荒木研一)
【ガイドの目】
◎11月が素晴らしい
雑木林が色づく11月ごろが素晴らしい。冬は日だまりハイキングが楽しめるが、念のため軽アイゼンを準備したい。新緑とツツジの時期は5月。
山中は水場やトイレがないので十分注意しよう。コースは一本道で「おおさか環状自然歩道」のサインが目印となる。
アクセスは山下駅から森上までのバス便はまずまずあるが、行者口バス停までは朝と午後のみ。
下山後の入浴施設は能勢温泉などがある。
▽参考タイム
森上(40分)玉泉寺(25分)登山口(30分)行者山(1時間)剣尾山(1時間10分)登山口(1時間)森上
提供:共同通信社