◇東鳳翩山(ひがしほうべんさん)(山口・山口市、萩市=734メートル)
◎市民が愛する山口の峻峰 中国の山々、歴史の街道
山口市の北にそびえる峻峰。
三角すい状にとがった頂上からの眺めは素晴らしく、山口市民や多くの人に愛されている。
主稜線(りょうせん)はかつての周防と長門の国境であり、分水嶺(ぶんすいれい)となっている。
山頂の東の板堂峠(いたどうとうげ)は長州藩の参勤交代道、萩往還(はぎおうかん)が通り、今も登山道として使われている。
今回は最も登られている二ツ堂コースから入り、板堂峠へ縦走して萩往還を下るコースを紹介する。
アプローチは、マイカーかタクシーで。
山口市から県道を北上、一の坂ダムを通り、錦鶏湖の先の天花畑(てんげばた)を左折した一の坂ダム運動公園が起点。
駐車場とトイレがある。車はここに置き、歩き始める。
車道を1キロ西に進むとやがて急勾配となり東鳳翩山登山口(二ツ堂コース)の看板がある。
登山道に入り、ジグザグに登る。
マツ、ヒノキ、スギなどの樹林の中をひたすら歩く。
標高差300メートルほど登ると、錦鶏ノ滝からのコースと合流。
植林帯の中をしばらく登れば、中国自然歩道のある主稜線の鞍部に到着する。
頂上へは西に向かう。
ここからは低木とススキの草原となる。
眺望が開け、左に山口市、右にダツヤ山などが見え始める。
鞍部から約15分で頂上だ。360度遮るもののない展望が楽しめる。
ベンチも複数あり、眺めながら昼食をとるにはもってこいだ。
北にダツヤ山や男岳、遠く東に十種ケ峰(とくさがみね)や青野山、すぐ西には西鳳翩山、南は遠く瀬戸内海が見渡せる。
下山は主稜線を東に戻る。
小ピークを五つ越えるとショウゲン山分岐に着く。
ベンチがあり南の眺めが良い。ここから東の板堂峠に下りる。
板堂峠は萩往還の峠である。石畳の道を右に下りると車道に出て、横切って古道に入る。
キンチヂミの清水、御駕籠建場、一貫石、一里塚跡などの史跡を見ながら下ると一の坂御建場跡(六軒茶屋跡)だ。
車道をもう一度横切り「四十二の曲がり」を下ると錦鶏ノ滝入り口、500メートルで出発点の一の坂ダム運動公園に戻る。
一年中楽しめ、登山者が途切れることがないが、特に秋にはショウゲン山への尾根の紅葉が美しい。(関西山岳ガイド協会 松島宏)
【ガイドの目】
◎歴史探訪が楽しめる
歴史探訪が楽しめる。山口市には曹洞宗の瑠璃光寺(るりこうじ)があり、室町時代に建立された五重塔は国宝だ。
日本三名塔の一つにも数えられている。
萩往還は日本海側の萩と瀬戸内の三田尻を結ぶ全長53キロの街道。
江戸時代、山陰と山陽を結ぶ「陰陽連絡道」として利用されてきた。急坂には石畳が敷かれ、土砂の流出を防いできた。
こけむした石畳はぬれると滑りやすい。雨天時には注意が必要で、ストックを使い安全に下ろう。
下山後は100円で利用できる宮野温泉山口ふれあい館がお勧め。
▽参考タイム
一の坂ダム運動公園(10分)東鳳翩山登山口(1時間)東鳳翩山(50分)板堂峠(1時間)一の坂ダム運動公園
提供:共同通信社